心に寄り添い、想いをつなぐ訪問看護
~その人らしい暮らしを支えるチームの力~

ユアーズ訪問看護リハビリステーション三郷 管理者・片岡

生活に寄り添う地域看護を求めて

私が看護師を志したのは、生まれ故郷の熊本県がきっかけです。
幼い頃、無医村で活躍する保健師の姿に憧れ、「いつか地域で働きたい」という大きな夢を抱きました。九州の看護大学で学び、看護師・保健師・養護教諭の資格を取得した後、総合病院で20年間勤務しました。
病院での経験はかけがえのないものでしたが、節目を迎えた頃、「新しいことに挑戦したい」という気持ちが芽生えました。

その折に在宅医療に触れる機会があり、地域の方々の暮らしに寄り添う看護への想いが強まり、キャリアを進める大きな決意につながりました。
当初、訪問看護には「ひとりで訪問して、すべて自分で判断しなければならない」というイメージがあり、最初は少し不安もありました。そこでまずは、在宅医療の現場を知るために診療所で1年間勤務しました。医師の診療をサポートする中で、地域での医療の現場を肌で感じることができましたが、訪問診療は治療が中心で、利用者さんと深く関わる時間は限られていました。
私が求めていたのは、治療だけでなく、利用者さんの「生活に寄り添う看護」です。
この想いを胸に、より利用者さんの生活に深く関われる訪問看護へ転向しました。
当ステーションに入職して5年になります。振り返ると、この仕事は私の看護観と深く結びついており、地域での生活を支えるやりがいを日々感じています。

チームで支える、利用者に寄り添う在宅ケア

当ステーションには、私を含め4名の訪問看護師が在籍しています。利用者さんの対応は担当制ですが、チーム全体で利用者さお一人おひとりの状況を把握しながら、よりよい看護を提供できるよう心がけています。毎週行っているナースカンファレンスでは、症例の検討はもちろん、日々の業務で困っていることや相談したいこと、新しい疾患についての勉強なども話し合い、みんなで学びを深めています。日常の小さな情報も、朝の記録を全員で確認することでしっかり共有しています。
当ステーションの大きな強みは、多くの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリスタッフが在籍している点です。非常勤を含めると看護師より人数が多く、地域では「リハビリといえばユアーズ」という印象も定着しています。
看護師とリハビリスタッフがしっかり連携を取りながら、『病気だけでなく生活全体を見守る看護』を行っています。
病気に関する不安は看護師が、日常生活の動作や生活環境に関する不安はリハビリスタッフが、それぞれの専門性を活かしてサポートすることで、利用者さんの生活の質を高めることができます。このチーム連携があるからこそ、一時的な対応に終わらず、利用者さんの毎日の生活を大切に考えたサポートを行えています。

柔軟な働き方と充実の教育体制

当ステーションでは、利用者さんの多くが慢性疾患を抱えており、医療依存度は比較的低めです。現時点では小児科や精神科の対応は行っていません。
働き方も柔軟で、時短勤務や一時帰宅も可能です。私自身も小さな子どもがいる中で働いており、子育て世代のスタッフも多いため、互いに助け合いながら勤務できる環境が整っています。ワークライフバランスを大切にしながら、無理なく働ける職場です。

訪問看護が初めての方や、ブランクのある方でも安心して働けるようにサポート体制を整えています。
看護技術についてはチェックリストを活用し、未経験の手技があれば、私を含むスタッフが同行して丁寧にサポートします。こうした体制のおかげで、経験豊富な看護師もそれぞれの得意分野を活かしながら、新しい技術を無理なく習得することができます。

心に寄り添う看護の魅力

訪問看護のやりがいは、利用者さんの心に寄り添り、想いを通じ合わせられる瞬間にあります。病院では難しい、利用者さんの大切な『生きがい』や『希望』に触れられるのも、訪問看護ならではの喜びです。

以前、終末期の利用者さんから「最後にタバコを吸いたい」という希望がありました。病院では、病状悪化を防ぐためタバコや甘いものの制限が厳しいのが一般的ですが、在宅では、その方の最期の願いを叶えられることがあります。こちらのケースでは、医師やご家族と十分に相談したうえで、私たちがお手伝いさせていただきました。利用者さんは自分でタバコを持つことも難しい状態でしたが、私がそばで支えながら火をつけることで、大切な願いを叶えることができました。奥様も「最後に好きなことをさせてあげたい」と思っておられたので、一緒に見守りながらサポートできたんです。病院ではなかなか叶わないことですが、在宅ならではの温かいケアが実現でき、私たちも大きな喜びを感じました。

こうした関わりを通して、利用者さんの生活に寄り添いながら、自分の看護観を活かせることも訪問看護の魅力です。訪問看護は『待っていてくれる人がいる仕事』でもあり、頼りにされ、心を通わせる瞬間に、何にも代えがたい喜びを感じます。

地域とつながる訪問看護の取り組み

私の今後の目標は、単に訪問看護を提供するだけでなく、地域に潜む「困っているけれど自分では助けを求めにくい方」にも手を差し伸べることです。訪問中に「まだ知らない家の中でも、助けを必要としている方がいるのでは」と感じることがあります。依頼を受けた方に看護を提供するだけでなく、『地域の健康相談室』のような取り組みを通じて、周囲に頼りにくい方々を支えていきたいと考えています。特に、高齢化が進むUR団地など、地域が抱える課題にも積極的に関わっていきたいです。

利用者さんにより良いケアを届けるためには、職種の枠を越えた協力が欠かせません。そのため、担当者会議にはできる限り参加し、チーム全体の視点で利用者さんを見守るように心がけています。

さらに、月に一度作成する報告書も、居宅介護事業所に出向き、直接ケアマネジャーに手渡すようにしています。報告書に書かれた内容だけでなく、顔を合わせて話すことで信頼関係を築き、『顔の見える関係』を大切にしています。スタッフもこの考えを理解して協力してくれており、チーム全員で取り組むことで、利用者さんだけでなく地域の困りごとにも気づきやすくなります。こうした活動を通して、地域全体を支える力になれると信じています。